JICEは2022・2023 年度の 2 年にわたり、文化庁委託事業『「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発事業』を実施しました。
「日本語教育の参照枠」(注1)は2021年度に文化審議会国語分科会が日本語の習得段階に応じて求められる日本語教育の内容及び方法・評価等に関する共通の指標として策定した枠組みです。
この指標を元に就労分野における日本語教育の円滑な実施に向けた環境づくりを促進することを目的に、 JICE は長年実施してきた「外国人就労・定着支援事業」(注2)の知見を活かして、 (1)カリキュラム・ シラバスの作成、(2)教師研修の開発・実施、(3)これらに関する成果報告に取り組んでまいりました。
まず、「就労分野の日本語教育」の視点・特色を踏まえて、「日本語教育の参照枠」を活用したカリキュラム作成の考え方を定義し、本枠組みに沿ったカリキュラム・シラバスのサンプルを作成するとともに、具体的な作成プロセスを提示しました。
詳しくは、文部科学省のホームページに事業報告が公開されましたので、[5]の「就労(就労分野における教育モデル開発報告)」と「就労(就労分野における教育モデル サンプル集)」をご覧ください。
「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発・普及事業:文部科学省
次に、「日本語教育の参照枠」を活用したカリキュラム作成の普及を目的とする教師研修を開発し、2023 年 9 月に全 3 回の研修を実施、26 名の日本語教師に参加いただきました。
(1)カリキュラム・ シラバスの作成の取り組みと並行して、「日本語教育の参照枠」を活用しコースデザインができるようになる初任から中堅の就労者に対する日本語教師の育成を目的として、オンデマンド学習と事前課題およびオンライン同期型研修を組み合わせた計15時間の教師研修を実施しました。いずれかの「就労者に対する日本語教師【初任】研修」を修了した日本語教師を対象に、「日本語教育の参照枠」の理解、学習者の日本語熟達度のレベル判定に関する知識・技能の向上、Can doベースのカリキュラム作成をテーマに、全3回の研修を実施しました(研修講師および概要は資料①を参照のこと)。
そして、これまでの本事業の取り組みの成果と課題を発表するため、2023年12月に「成果報告会」を実施しました。会の後半ではモデレーターおよび就労に関わる日本語教育機関からの3名のパネリストをお呼びし、「就労者に対するカリキュラム作成」と題して、パネルディスカッションを実施しました。
当日は200名を超える日本語教師や自治体関係者等が、オンラインセミナーを視聴し、「就労分野の日本語教育機関4団体が集まり、具体的な事例を知ることができ、興味深く、有意義だった」といった声が聞かれました。
2024年度は、教育モデルを普及する段階に入り、日本語教師向け研修や他機関と連携した取り組みを実施しています。
本事業を含め、今後も、就労分野における日本語教育およびその人材養成に尽力してまいります。
多文化共生事業部 日本語教育課
(注1)「日本語教育の参照枠」については、こちらをご参照ください。
(注2) JICEは2009年より厚生労働省委託事業「外国人就労・定着支援事業」を全国で展開し、求職段階の定住外国人を対象に、職種・職場共通の「しごとのための日本語」講習をキャリアプランニングや職場見学等とあわせて、実施・運営しています。
コース・事業概要 | 外国人就労・定着支援事業(研修) (jice.org)